1.注文住宅への引っ越し
私が中学生頃まで育った家は、戦後に建てられ、その後増改築を何回か繰り返した、年季の入った一戸建てでした。自分の部屋はなく、六畳ほどの寝室に家族四人で布団を並べ、いびきをかいている父の隣で眠っていました。幼いながらも、うるさいし窮屈だなと思っていたことを覚えています。だから、小さい頃から自分の部屋を持つことは私の夢でした。
そんな中、転機が訪れたのは中学2年生の頃です。家の老朽化が進み、ひびや亀裂が壁にたくさん入り、住むことに危険を伴うようになってきたのです。そして、両親は注文住宅を建てて引っ越すことを決意しました。
2.夢にまでみた一人部屋のはずが…
建築家の方と相談しながら間取りなどを決めていき、無事に自分の部屋を持つことになりました。その時は嬉しくて仕方がなく、完成するまでに何度も自分の部屋を訪れて、この部屋で楽しく過ごす自分の姿を想像し、ワクワクしていました。その時は、後に知る我が部屋の問題点に気付くことはありませんでした。
そしてとうとう引っ越しました。自分の部屋で初めて過ごす夜、これからは静かな環境で一人を満喫できると喜んでいました。しかし、ある違和感にすぐ気付きました。
「ガーガー!!」
なんと聞き覚えのあるいびきがはっきりと聞こえてきたのです。そう、父のいびきでした。新築の我が家は部屋の壁がとても薄く、話し声や物音が丸聞こえだったのです。両隣の部屋の音が丸聞こえだったので、想像していた一人部屋とのギャップに私はショックを受け、しばらく落ち込んだことを覚えています。
3.大好きな我が部屋
しかし、人は慣れる生き物です。一年もすれば両隣の音など気にならなくなりました。音以外はとても素敵な部屋なのです。南向きで日当たりがよく、大きな窓もついていて風がよく通ります。社会人になり一人暮らしをするため一度家を出ましたが、仕事の都合でまた実家に戻ることになり、このうるさい部屋にまた帰ってきました。とても落ち着きます。安心します。私は、うるさい我が部屋がいつのまにか大好きになっていました。
いろいろありましたが、私達家族を守ってくれている我が家には感謝しかないです。ただ、もしこれから結婚して注文住宅を建てる機会があれば、音だけは気を付けたいなと思っています。